1.経緯

北陸新幹線は東京と大阪を結ぶ計画の整備新幹線で現在高崎-金沢間で開通し営業しています。2022年末には現在建設中の金沢―敦賀間が開通し2023年春に開業予定です(2020年11月10日開業が約1年以上遅れることが正式に報告されました)。

2016年12月与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームは続く敦賀―新大阪間ルートを小浜・京都・松井山手を通過するルートとすることを正式決定しました。そして2019年6月には事業者である鉄道・運輸機構が環境影響評価配慮書を公開し、建設に向けた環境影響評価を開始したところです。

参照:
鉄道運輸機構・北陸新幹線
鉄道運輸機構・北陸新幹線(敦賀・新大阪間)環境影響評価

1.1 小浜・京都ルートの概要

図1に小浜・京都ルートの建設可能性範囲を示します。総延長は143㎞で設置駅は小浜東、京都、松井山手が予定されています。小浜東から京都駅南までの南北ルートは山岳区間を含め大深度地下(深さ40m以深)を通る予定です。建設可能範囲は京都府北部で東西数キロ、京都市内で東西約10キロ程度の幅を持ち、現時点でどこを通るのかは明らかにされていません。建設区間の80パーセントがトンネルになる予定です。


北陸新幹線小浜・京都ルートの建設可能性範囲

京都府の最北部は平成28年に指定された丹波高原国定公園を縦断することになります。京都大学芦生演習林と茅葺民家で有名な北伝統的建造物群保存地区を避けるよう、美山町の江和・田歌地区を縦断する予定です。その南では右京区京北町の山地部地下を通り、大深度地下で京都盆地を南進します。この間に1級河川の由良川、上桂川、宇治川、木津川を横断します。京都-松井山手駅間の都市部は地下、田園部は地上を通過して松井山手駅から新大阪までは再び地下区間となります。

 丹波高原国定公園と建設可能性範囲の関係

参考ページ:
鉄道運輸機構・北陸新幹線(敦賀・新大阪間)環境影響評価 

1.2 いつ着工されるのか

現時点では着工時期は未定となっていますが、国土交通省は財源確保の観点から2031年着工、2046年開業を想定しています。しかし近年整備新幹線の建設は数年前倒しされる傾向にあり、一部与党議員の中には金沢―敦賀間の開通直後の着工を推進する声もあります。

参考ページ:
福井新聞・23年敦賀開業後に即新大阪へ着工北陸新幹線自民党チームが一致

1.3 なぜ小浜・京都ルートに決まったのか?

北陸新幹線の敦賀・新大阪間のルートについては元々関西広域連合において各府県の知事の間で協議が行われていました。2009年関西広域連合は米原ルート、小浜・亀岡ルート、湖西ルートの検討を開始しました。この結果2013年3月28日、関西広域連合は建設費が最も安く工期も最短として、米原ルートを政府に提案する方針を決めました。

ルート比較結果について滋賀県の見解

この合意に変化が訪れたのは与党議員(自民党・公明党)が構成する、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム北陸新幹線敦賀・大阪間整備検討委員会(以下与党PT)が発足してからになります。2016年1月28日関西広域連合は提案していた米原ルートを撤回しました。与党PTにルート選択を委ねることになったのです。

毎日新聞報道(2016年1月29日)

そして新案として浮上したのが小浜・京都ルート、舞鶴・京都ルートです。与党PT検討委員会において国土交通省は平成28年3つの候補ルートの費用便益比の比較を発表しました。検討されたのは米原ルート、小浜・京都ルート、舞鶴・京都ルートの3つです。米原ルートの建設費用5,900億円、費用便益比2.2に対し、小浜・京都(・学研都市)ルートは建設費2兆2900億円、費用便益比0.9、舞鶴・京都ルートは建設費2兆5000億円、費用便益比0.7と報告しています。公共工事としての経済性は明らかに米原ルートが勝っていました。小浜・京都ルートは便益が費用を下回り、公共工事としては不適当なはずですが、与党PTは小浜・京都ルートを採用ルートとして発表しました。この理由は公表されていません。

国土交通省鉄道局・北陸新幹線敦賀・大阪間のルートに係る調査について

2021年5月国民民主党の前原誠司衆議院議員が政府に対し小浜・京都ルートの決定経緯について政府に質問主意書を提出しました。政府はこの質問に対し、小浜・京都ルートの決定は与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム北陸新幹線敦賀・大阪間整備検討委員会によるもので、政府の決定ではないと答弁しました。与党PTの検討委員会には国土交通省、JRなど関係者が出席して協議が行われるのですが、この検討会の議事録は非公開です。つまり公共工事である整備新幹線のルート決定が全く国民に説明の無い形で事実上行われています。

前原誠司衆議院議員の質問主意書(2021年5月25日)

政府の答弁書(2021年6月4日)

前原誠司衆議院議員の再質問主意書(2021年6月9日)

再質問に対する政府の答弁書(2021年6月18日)

1.4 整備新幹線と与党PTの関係

以下に示すのは新幹線建設の手続きです。国土交通大臣が各過程で承認や決定を行っています。現在は環境影響評価が行われている(右下の黄色)の段階にあります。この図には与党PTの名前は出てきません。ですので与党PTは政府の公的な計画過程に位置づけられていないのですが、実際に計画決定に大きな権限を持っていることになります。

新幹線建設の手続き(出典:国土交通省鉄道局)

与党PTのメンバーを以下に示します。与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの下に敦賀・大阪間整備検討委員会が位置づけられる構造になっています。現在北陸新幹線以外にも北海道、九州西で整備新幹線の建設が進行しており、それぞれの新幹線に検討委員会が設置されている構造です。

北陸新幹線敦賀・大阪間整備検討委員会メンバー(2016年ルート決定時)

北陸新幹線敦賀・大阪間整備検討委員会メンバー(2021年現在)

 

1.5 環境影響評価とは?

環境影響評価は大規模な開発行為を対象に、その事業が環境に与える影響を評価し、環境影響をどれだけ回避・低減したかを社会に説明する手続きです。日本では1999年に制定されました。環境アセスメントは事業者と市民の意見交換を通じて適切な意思決定を社会的に支援する方法です。開発について複数の代替案を比較し、科学的評価と価値観の重みづけに基づいて最適なものを選ぶプロセスです。
環境影響評価はi)方法書、ii)準備書、iii)評価書という3つの文書の作成を通して行われます。方法書、準備書は公告・縦覧され、これに対し市民が意見書を提出することができます。2019年11月に環境影響評価方法書が公開され、現在は環境影響評価準備書の作成段階にあります。このため2020年12月から京都府内の8市1町で環境影響評価本調査が開始されたところです。調査は2022年2月まで行われる予定で、その後数ヵ月を経て環境影響評価準備書が公告・縦覧されます。

環境省・環境アセスメント支援ネットワーク

1.6 根拠となる法律は?

北陸新幹線は公共工事として整備が進められています。その根拠となるのは全国新幹線整備法(昭和四十五年法律第七十一号)です。

  • 新幹線の定義(第2条)
  • 建設費用の負担など(第13条)

e-Gov・全国新幹線整備法