斜坑周辺の自然破壊
斜坑周辺は工事車輛の待合い、土砂の仮置き、土壌・水処理などに数ヘクタールの面積が必要になります。
由良川への影響
トンネルの掘削は由良川上流で行われます。斜坑がどこに設置されるにしても、それは由良川に注ぐ支流に設置されることになります。斜坑からは掘削土砂とトンネルへの浸出水の放水が行われます。よって以下のような事態が懸念されます。
・トンネル浸出水の水質が地表水と異なることによる河川生態への悪影響
・仮置きした掘削土から浸出する水の悪影響
・上水水質への悪影響(上水取水源上流で工事が行われる場合)
・斜坑起源の濁り水による透明度の低下
・要対策土壌からの重金属の浸出
・トンネルへの漏水による河川流量の減少(トンネルで由良川を横断する場合)
トンネル付近での水枯れ
トンネルの通過地域では地下水脈がトンネルで分断されることによって沢の水枯れがよく生じます。
新幹線の走行騒音
由良川を橋梁で横断する場合は、新幹線の通過時に騒音が発生します。これはトンネル周辺の動物生態に影響を与えることになります。また橋梁周辺の住民は恒常的に騒音の影響を受けることになります。高速鉄道トンネルは低周波発生源であり、離れていて直接見えない場所まで音は回り込みます。
工事車輛の走行
工事は開始から終了まで約15年間かかります。この間に地域を往来する工事関係の大型車輛は知井地区のみならず、美山町広域に影響を及ぼすことになります。大型車輛が集中して走行する区間では、渋滞や騒音の懸念があります。
観光業への打撃
美山町は長年「日本一の田舎」を目指した町づくりを行ってきました。平成28年には「原始的な自然をはじめ、京都の歴史・文化を支えた豊かな自然環境が残る地域」として周辺地域とともに京都丹波高原国定公園に指定されました。その原動力となったのは1960年代に持ち上がった芦生研究林内へのダム建設計画への地元の反対運動(2005年に関電は計画撤回)や北村の茅葺民家保存運動(1993年に伝統的建造物保存地区に指定)です。地道な自然や文化の保全活動の結果今日の美山町があります。
日本の田舎の原風景を見ようと今日多くの観光客が美山町を訪れていますが、新幹線建設はその魅力を大きく減じることになります。多くの人は美山町内の特定施設だけなく、その間の移動で景色を楽しんでいます。大量の工事車輛の往来はその魅力を大きく減じることになるでしょう。
釣り人、サイクリストの減少
美山川は長きにわたりアマゴ、鮎で多くの釣人を惹きつけてきました。工事による河川環境の変化は釣人を遠ざけることになります。工事車輛の排気ガスと危険は近年増加してきたサイクリストを駆逐してしまいます。
Iターン、Uターン者の減少
美山町でも少子高齢化、若年層の流出は深刻です。その流れを緩和しているのは地域外から移住していくるIターン者です。Iターン者の多くは美山町の自然に可能性を見出し移住する人達です。工事が始まればIターン者は大幅に減ると思われます。就業機会の減少はUターン者の減少にもつながります。このことが15年続けば、多くの集落は存続の危機に直面するのではないでしょうか。
トンネル残土の最終処分
残土の最終処分を受け入れる地主があれば、美山町内での埋め立てが行われる可能性があります。このことは極端気象災害時に下流の流量増大や土砂崩れの可能性を増やすことになります。河川水質への影響も長期的、不可逆的なものになります。